1999年6月17日木曜日

〇雄叫び 1999年06月17日

 〇雄叫び 1999年06月17日


 「なんだ、こりゃ」と思わず口にでた。単身赴任先の東京から久しぶりに京都の自宅に帰ると、家中に「六甲おろし」が鳴り響いていた。カミさんも娘も息子も野村阪神の行方に一喜一憂し、本紙社会面でも阪神をめぐる「同時進行ドキュメント」が展開され、あちこちで「虎(とら)」が吠(ほ)えていた。

 「虎」の雄叫(おたけ)びを2度聞いたことがある。1度目は1973年10月22日、甲子園球場での阪神―巨人戦。阪神は残る2試合のうち一つの引き分けでも優勝だったが、中日戦に敗れ、V9をかけた巨人との戦いに臨んだ。当時、甲子園署担当の記者1年生で、わくわくしながら球場警備本部につめたが、結果は0―9で阪神の完敗。「ウオー」。阪神の最終打者が三振に倒れるや、スタンドから地鳴りのような声が上がり、ファンがグラウンドに乱入、心に潜む「虎」の怖さを思い知った。

 2度目は社会部遊軍記者だった85年、タイガース担当として密着取材し、神宮球場で21年ぶりの優勝の凱歌(がいか)を聞いた。だが、それ以来、家族みんなに「虎」が棲(す)みついてしまった。

 家を離れる際、なぜかふと、家族を動物園の中に置き去りにするような気がした。「そもそも甲子園に連れて行ったのはだれよ!」とみんなに吠えられそうだが、置き去りにされているのはこちらのほうか。

 

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