1994年2月17日木曜日

〇春の熱気(1994年2月17日)

 


〇春の熱気(1994年2月17日)


 「うまさじゃない。熱気こそが人を感動させる」。そう言ってしまえば、ごくあたりまえのことだけど、大阪市立美術館で開催中の"書のセンバツ"、「第二回国際高校生選抜書展」を見て、「やっぱりそうだよな」と思った。整ったきれいな書というより、若々しい息吹がみなぎっていた。

 あれは一九七八年の早春だった。手塚治虫さんが、スピルバーグの新作「未知との遭遇」の試写会上映前の一時間余りを、私のインタビューのために割き、語ってくれた。

 「ボクはアマチュアなんです。絵がヘタだといわれたし、自分でもそれはわかっている。だからこそ、一生懸命にやるし、常に努力してきた」「でも上手になって、枯淡の境地に入れば、いつしか納まりかえって、ただうまい、の一言で終わってしまう」「うまくなろう、うまくなろう、という熱気こそが人を感動させるのですよ」

 そのときの「人生の奥義を教えてもらった」という感激は忘れられない。この書展を見る限り、ワープロ時代とはいえ、新鮮な感覚を通して書がよみがえろうとしていた。新しい春の兆しが確かにあった。四月には、宝塚に手塚治虫記念館もオープンする。

1994年2月3日木曜日

〇遠い自分(1994年2月3日)