1996年5月21日火曜日

〇紙芝居(1996年05月21日)

  

〇紙芝居(1996年05月21日) 


 「水俣じゃ海が毒されて、漁はでけんし、奇病じゃちいわれて町で仕事もでけん。患者さんたちは関西にでん(にも)、関東にでん、仕事ば探して出かけて行きよらした」            

 絵本「水俣の紙芝居」(神戸・水俣病を告発する会)が友人から届いた。古里の言葉が懐かしい。絵を描いたのは、「マンガちゃん」と呼ばれていたイラストレーター、永井文明さん。灘中・高校、京都大法学部を経て絵の道に転じ、水俣のことを子どもたちに語り継いでいきたい、との夢を抱きながら3年前の5月、54歳で亡くなった。遺骨は不知火の海にまかれた。

 水俣病公式発見から40年。国による最終解決策を患者さんは受け入れ、告発する会は永井さんが残した紙芝居の原画をもとに絵本を出版した。「この本は永遠に未完だな、との思いがあるが、永井さんとのつきあいのささやかな記念に」と後書きにある。

 カチカチ、さあ始めるよ…、天国で紙芝居をする永井さんの姿が目に浮かぶ。マルチメディア時代でいろんな「電気紙芝居」になじんできた今の子どもたちにも、水俣のことはやはり、肉声でこそ語り継いでいかなくては、と思えてきた。