2005年2月13日日曜日

西論風発:食育のススメ “考える力”は食にあり

 〇掲載年月日 2005年02月13日 

西論風発:食育のススメ “考える力”は食にあり=論説委員・池田知隆 

  

 あす14日は、香川県国分寺町立国分寺中学校の「弁当の日」だ。献立から買い出し、調理、弁当詰めのすべてを生徒が行って学校に持参する。親が作った弁当を食べる例はあっても、中学生自らに弁当作りを勧めるのは全国初ではないかという。

 「自分が食べるものを自分一人でも作れるようにしたい」というのが同校長、竹下和男さん(55)の願いだ。4年前、前任の小学校で「弁当の日」を実施し、今年度からは中学校でも3日だけ設けた。

 当然のように「弁当を持って来られない生徒もいる」との声が学校内から出た。竹下さんはいう。「なぜ持参できないのか。それを同級生や担任はどうするのか。それはその子の教育の根本にかかわる現象で、子供からのこんないいサインはない」

 「弁当作りよりも学力向上を」と不安を抱く親にも「ものごとを考え続けるのに必要な体力や意欲の低下がより深刻です。自分の生活が他人にいかに支えられているのか、生徒に気付いてほしい」と訴えた。20学級中14学級が参加し、その日の給食費は返還する。

 「百ます計算」の実践で知られる小学校長、陰山英男さんは、摂取する食品が多い子ほど成績が高い傾向を示すデータを親に見せ、食事に気遣うように頼んでいる。「よく寝て、よく食べるという生活の基本を取り戻すだけで子供は見違えるようになる」と陰山さんも力説する。

 一人で食事する「孤食」や、朝食を食べない「欠食」が増え、子供たちの食生活が乱れている。小泉首相は「食育」の推進を強調し、衆院では「食育基本法案」が継続審議中だ。多くの教育現場で「石橋をさんざんたたいたあげくに渡らない」という「事なかれ主義」が横行する中で、竹下さんの「食育」への挑戦は応援したい。

 「弁当は親が作るほうがずっと楽です。だけど、それを手伝わない不親切さも立派な教育です」。大人が子供にやらせるべきことをやらせていないのではないか、と竹下さんは問いかける。

 子供たちの“自立意識”を育てるためには、大人のほうも生活のは避けられない。