2005年8月4日木曜日

〇古里の声(2005年08月04日)

 〇古里の声(2005年08月04日) 

 

 東京・浅草の観音さまを久しぶりに訪ね、夕立にあって近くの居酒屋に飛び込み、雨宿りしながらビールを飲み始めたときだ。

 カウンターの向こうの座敷で、にぎやかに語らっていた若い4人連れの1人の声が耳に留まった。「九州の炭鉱町の○○小学校を出たんだけど……」。えっ、それって私の母校じゃないか。

 たまらず「私もそこの卒業生だけど……」と名乗ると、彼は「福岡のチンドン屋で、ひと仕事終えたところです」。関西に住む私は、福岡の見知らぬ彼と、東京での不思議な出会いに乾杯した。

 やがて「ちょっと校歌を歌ってみようか」とあいなったが、記憶の闇の底から歌詞が次々と出てくるではないか。「朝雲なびく 小岱(しょうだい)を 光と仰ぐ この窓に……」。自分でも驚くばかりだった。

 その直後、母校の中学校から同窓会の案内が届いた。炭鉱は閉山し、ベビーブーム世代とはいえ古里に残る友は少ない。「お盆に帰って来いよ」と旧友の声が遠くから聞こえてくる。これも観音さまのお導きか、40年ぶりに懐かしい友に会ってみよう。