2003年8月2日土曜日

西論風発:教育委員会改革 活性化の道筋を探ろう

 〇掲載年月日 2003年08月02日 

西論風発:教育委員会改革 活性化の道筋を探ろう=池田知隆・論説委員 

 

 「教育委員会はあまりにも形式化している」と埼玉県志木市が、教育委員会を廃止する「地方自治解放特区」を政府の構造改革特区推進室に提案した。教育委員会の設置を義務付けている地方自治法の運用を変えるように求めている。現実には教育委員会の廃止がすんなりと認められそうもないが、教育委員会を活性化する道筋を探る時がきているのも確かだ。

 教育委員会は、教育を政治と切り離して中立性を保ちながら、住民の意思を反映させるために自治体ごとの設置が定められている。1948年の制度発足当初、住民が委員を選ぶ公選制だったが、56年に任命制に変わった。

 現在、月1回程度開かれている各地の委員会では、委員は感想を述べるものの、教育長が事実上、物事を判断、実行している。そのような教育委員会を活性化するために東京都中野区が81年、住民投票によって実質的に委員を選ぶ準公選制を実施した。だが、住民の関心が次第に薄れ、94年に廃止が決まった。

 いっそのこと、委員会権限をて、教育行政の効率化を図ろうとの動きも出てきた。島根県出雲市では01年4月、学校教育以外の文化やスポーツ分野を市長部局に移管し、教育委員会の役割を学校教育の分野に特化した。だが、出雲市が合併協議を進めている隣接市町村の反対で、合併後の新市ではその出雲方式は採用されない。

 全国の市長有志でつくる「提言・実践市長会」(会長、石田芳弘・愛知県犬山市長)は、教育委員会制度の廃止や市町村立学校の教員人事権の市町村移管を盛り込んだ改革を提言した。

 それに呼応した志木市は、教育委員会の廃止理由に「委員会は合議制のために、決定の責任の所在が不明確だ。教育問題への対応も迅速にできない」ことをあげた。委員会権限は教育長に委ね、教育長への諮問機関として審議会を設けるという。

 こうした動きを文部科学省は「政治的中立性が失われる」と警戒するが、そのような名目で教育の中央統制が強化、維持されてきたのも事実だ。学校の荒廃などの責任の一端は、文科省が県教委、市教委、校長会に指示を下ろす画一的な行政システムにある。教育の偏向については、積極的な情報公開などで是正していくことも可能だ。

 地方分権の時代に、各地域の独自性を生かした教育委員会の運営方法を検討してもいいではないか。半世紀にわたって「形式化」が指摘されてきた教育委員会のあり方を見直さなければならない。