2005年11月25日金曜日

〇生命線(2005年11月25日)

 〇生命線(2005年11月25日) 

  

 「聖(ひじり)」とはもともと、「聴く力」をもつ人のことだろうか。「聖」の文字は、「耳」を「呈」すると書くではないか。人々の悩みや苦しみや悲しみ、命の叫びを聴くために、自分の耳を相手に差し出す人を指しているようだ。

 伊藤みどりさんも現代の「聖」といえるかもしれない。台湾語・北京語によるいのちの電話「関西生命線」(06・6441・9595)を大阪で開設し、今月で15周年を迎える。

 そのきっかけはふと目にした新聞だった。2日間連続で、台湾人ホステス4人が川に飛び込み、1人が死亡、という記事があった。「もし彼女たちの悩みを聞く1本の電話でもあれば、自殺を防げたかもしれない……」。台湾生まれの伊藤さんも日本人男性と結婚して来日し、日本語が分からず、悩み続けた。その体験から日本初の「生命線」を維持している。

 「受話器を通し、日本の社会がよく見える」と伊藤さんは言う。「関西生命線」の活動をどう支えていくのか。それは、関西という地域の外国人の声を「聴く力」を示している。