1999年5月13日木曜日

〇知のゆくえ(1999年05月13日)

 〇知のゆくえ(1999年05月13日) 


 「日本の若者たちは携帯電話による『話し言葉』の世界にいるが、米国の若者はむしろ電子メールによる『書き言葉』のほうではないか」。先日開かれたサントリー文化財団の創立20周年記念国際シンポジウム「新たな知的開国をめざして」で、劇作家の山崎正和さんがこんな日米比較をしていた。

 それはパソコン、携帯電話の普及時期のズレで生じた一時的な現象かもしれない。だが確かに、自らの考えを世界に語るどころか、閉鎖的な“島宇宙”でおしゃべりに夢中な日本は、世界から見えにくくなっているようだ。

 「専門的な学術分野での交流は盛んでも、教養の分野での交流は細くなっていないか」。そう語る山崎さんはダニエル・ベルさん(ハーバード大名誉教授)たちと国際知的交流委員会を1997年に発足させ、先月末には国際総合誌「アステイオン」を再刊した。国境を超えた文化のルネサンスに日本も加わっていこう、というのだ。

 一方、世界からひときわ“浮遊”しているような日本の若者文化もまた、アニメ、コミック、ファッションのように言語や国境を超え、各地に浸透している。その影響は政治や経済活動よりも速やかで、意外と深い。日米のどちらが知的か、という前に、知的な貢献や交流のスタイルが大きく変わっていくのかもしれない。

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