〇遠い家族(1999年04月01日)
懐かしく、不思議な体験だった。草原でつつましく生きるモンゴルの人々を描いた映像作品「四季・遊牧」。上映時間7時間40分、休息時間も含めると10時間にも及ぶその「お弁当二つの上映会」が東京都内で開かれた。会場全体にゆったりとした空気が流れ、人間の暮らしをめぐって談笑の輪が広がり、いつしか私もひき込まれた。
監督、撮影は滋賀県立大学教授(遊牧地域論)、小貫雅男さん。1992年秋から1年間、現地滞在して撮影したビデオ125時間分を編集した。ナレーターも自らこなし、愛情に満ちたまなざしで遊牧生活を映し出している。
上映会には盛岡、仙台、新潟から駆けつけた夫婦連れがいた。応募はがきに「失業し、元気のない主人にプレゼントしたい」との添え書きもあった。今、家族ってなんだろう。家族は最も身近なようで、遠いのかもしれない。遠いモンゴルの家族を通して、観客はそれぞれの家族の絆(きずな)を探していた。
「長時間かけ、私たちとは対極の“世界”に身を浸すことは意外と新鮮なようです。地道だけど、上映運動をめぐるさまざまな出会いを重ねる中で、現代の“閉塞(へいそく)”を打開する希望が見えてくるかもしれない。沖縄での上映会も決まり、いよいよ全国各地を回ります」
春、4月。小貫さんの新たな旅立ちを見守りたい。
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