〇追悼展にて(2006年08月10日)
「パレスチナ難民キャンプにいっしょに行きませんか」
昨年6月に57歳で亡くなった画家、貝原浩さんにそう誘われたのは4年前のこと。京都・寺町のギャラリー・ヒルゲートで開催中の展覧会「追悼貝原浩―新たな出立」(13日まで)を見ながら、思い切ってその旅に同行しなかったことを後悔させられた。
貝原さんは、チェルノブイリ原発事故後の現地で暮らす人々を描いた画文集「風しもの村から」や挿絵、マンガ、装丁など膨大な作品を残している。現代を深く見つめ、政治的な鋭いユーモアを含んだものが多い。
会場には、「風しもの村」の人たちが描かれた大きな絵巻物が壁いっぱいに掛けられていた。貝原さんの遺骨の一部はその村に埋葬されているが、一瞬、その絵巻物の村人たちの間から貝原さんの霊魂が漂ってくるように思えた。
旅すること、おいしい酒と食べ物が大好きだった貝原さんは何よりも「描く人」だった。絵描きとして人々の暮らしにどう向き合えるのか。そう問いかける旅につきあってみたかった。
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