2002年10月12日土曜日

西論風発:国立国会図書館関西館 世界への“知的発信拠点”に

  

〇掲載年月日 2002年10月12日 

 西論風発:国立国会図書館関西館 世界への“知的発信拠点”に=池田知隆・論説委員 

  

  「真理がわれらを自由にする」。国立国会図書館法の前文でうたわれている精神だ。その確信に立って、「憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立される」とある。

 国立国会図書館関西館(京都府精華町)が7日開館した。インターネットが普及し、今では「どこでも、いつでも、だれでも」アクセスできる巨大な情報空間が出現した。電子図書館機能を飛躍的に高めた関西館を通して、世界平和に寄与する大図書館の使命を再認識しよう。

 国立国会図書館は1948年に創設された。新憲法下の代議制を支える「国会図書館」として構想され、国民全体に図書や資料を保存、提供する「国立図書館」の要素が加わった。

 今後、東京本館が「議会図書館」として、関西館が「中央電子図書館」としての役割に特化する。来年1月からは各家庭のパソコンからアクセスし、資料のコピーをオンラインで請求できる(利用者登録制)が始まり、その「遠隔利用サービス」も関西館が一手に引き受ける。

 関西館の収蔵能力は約600万冊(第1期分)だが、将来は約2000万冊まで拡大でき、東京本館(約1200万冊)を上回る。アメリカの議会図書館がつくる「アメリカの記憶」コレクションでは映像、音、写真などの徹底した資料の蓄積を図っている。国立国会図書館もまた、「日本の記憶」装置としての役割を果たすべきだろう。

 関西館は、「21世紀に迎える危機を克服し、人類の幸福に貢献する」ために研究を重ねる「関西文化学術研究都市」の一角にある。それだけに科学技術関係のほか、アジア関係の資料を重点的に収蔵し、閲覧室で約5万冊の資料を開架する。

 アジアの文献センターとしての情報発信機能を高めるためにホームページは英語版のほか、中国語や朝鮮語による利用案内なども充実させてほしい。ここは世界の人々に日本への理解を深めてもらう「窓」でもある。

 エジプトでは約2000年前、世界最大といわれた図書館の再現に向けてアレキサンドリア図書館がこのほど完成した。ここの最大の特徴は、当時の文化交流の中心であったように各種国際会議やイベントを通して世界中の文化・学術交流の拠点にすることだという。

 新時代の図書館は、文明の衝突を乗り越え、民族、宗教間の相互理解を深めるための役割を担っている。私たちも、関西館を、日化を発信し、多文化理解の「知的拠点」として活用し、育てていきたい。

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