〇掲載年月日 2002年06月02日
西論風発:入学金・授業料返還 大学は経営モラル見直せ=池田知隆・論説委員
私立大学に前納した入学金や授業料が、入学辞退しても返還されないのは、昨春施行された消費者契約法違反ではないか。こう訴えて大阪の弁護士たちが「ぼったくり入学金・授業料返還弁護団」を結成した。今月末に41大学、19専門学校を提訴するが、この動きを支持したい。
現在、大半の私大が「いったん納めた学費は返還しない」との入試要項をタテに入学辞退者への学費返還に応じていない。だが、「受験生の不安な心理につけこみ、大学は暴利を得ている」との批判が高まっている。
先日、弁護士らが開いた「ぼったくり入学金・授業料110番」に寄せられた相談は約400件。その中には医学部を3校受験し、入学辞退した2校分で約1400万円の授業料などを支払ったケースもあった。
最近は特に、少子化で推薦入試枠による「青田買い」傾向が進み、12月から入学金、授業料、施設費を一括納付させる私大が多い。文科省では来年度入試で「(大学納付金を)合格発表後、短期間内に納入させるような取り扱いは避けるなどの配慮」を一般入試だけではなく、推薦入試にも私大側に求めている。
これまで授業料の納付期限をめぐって、旧文部省は75年に「入学式の2週間前以降」との大学局長通知を出し、多くの私大がそれに沿ってきた。文科省は、来年度の入試要項からさらに「学費を返還しない」との条項の削除も要請する。
このような動きに対応して龍谷大学(京都市)は、今年度実施の全入試(13種)から、3月末(4月入学時)までは入学金(20万円)を除いて返還申請ができるようにする。他の大学もこれに続き、率先して「タダ取り」批判に答えてほしい。
入学金を返還対象から除外するのも、本来はおかしな話だ。消費者契約法では、契約の取り消し料や違約金は、実際の損害額を超えてはならない、とある。入学しないのに、多額の入学金をとる理由は見当たらない。
受験生が殺到した入試バブル期は過ぎ、大学は学生から選ばれる側に回った。大学が魅力ある教育・研究機関として生き延びるためには、経営内容を自浄しなくてはならない。書生論と言われかねないが、大学は、実際に学ぶ学生の授業料と公的補助、寄付で経営するのが常道だ。建学の精神を踏まえて、大学への寄付を求めやすくする手立てを考えていくべきだろう。
大学経営は、教育への強い意思と情熱によってこそ支えられる。そのような教育的な原点から、大学の経営モラルを今一度、見つめ直してほしい。
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