〇ナシの涙(1996年11月02日)
「今年の味はどう?」。九州の実家から「荒尾ナシ」が届き、母から電話があった。甘くて、水気も多く、歯ざわりのいいジャンボナシで、ふるさと自慢をしたくなるほどうまい。
一切れ口に入れると、かつて三井三池炭鉱の黒ダイヤ景気にわき、いまはすっかり寂しくなった故郷の光景が目前に広がってくる。
北海道・夕張炭鉱の夕張メロンと同じように、炭鉱離職者対策の一端を担った特産品のナシは少しずつ知られるようになった。
春、ナシ畑は白いじゅうたんを敷き詰めたように花を咲かせる。
ふと、映画「ひまわり」の1シーンが浮かんだ。出征した夫を捜し、ソフィア・ローレンが訪ねた激戦地一面に咲くひまわり。戦争の悲しみ、心に渦巻く情念を見事に表現していた。ここも労働争議、炭鉱爆発など時代の荒波に襲われ、ナシ畑の下には炭鉱マンの思いが埋もれ、白い花はその涙のようにも見える。
いつも仰ぎ見ながら育った三池炭鉱のシンボルで、有明海底につながる「東洋一の竪坑やぐら」(旧四山鉱)が先日、爆破、解体された。三池炭鉱そのものも来春には閉山となり、124年の歴史を終える。今年のナシはほんのちょっとほろ苦い。
「今年の味はどう?」。九州の実家から「荒尾ナシ」が届き、母から電話があった。甘くて、水気も多く、歯ざわりのいいジャンボナシで、ふるさと自慢をしたくなるほどうまい。
一切れ口に入れると、かつて三井三池炭鉱の黒ダイヤ景気にわき、いまはすっかり寂しくなった故郷の光景が目前に広がってくる。
北海道・夕張炭鉱の夕張メロンと同じように、炭鉱離職者対策の一端を担った特産品のナシは少しずつ知られるようになった。
春、ナシ畑は白いじゅうたんを敷き詰めたように花を咲かせる。
ふと、映画「ひまわり」の1シーンが浮かんだ。出征した夫を捜し、ソフィア・ローレンが訪ねた激戦地一面に咲くひまわり。戦争の悲しみ、心に渦巻く情念を見事に表現していた。ここも労働争議、炭鉱爆発など時代の荒波に襲われ、ナシ畑の下には炭鉱マンの思いが埋もれ、白い花はその涙のようにも見える。
いつも仰ぎ見ながら育った三池炭鉱のシンボルで、有明海底につながる「東洋一の竪坑やぐら」(旧四山鉱)が先日、爆破、解体された。三池炭鉱そのものも来春には閉山となり、124年の歴史を終える。今年のナシはほんのちょっとほろ苦い。
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