1994年5月12日木曜日

〇緑の音(1994年5月12日)

 


〇緑の音(1994年5月12日)


 「緑の風です。ああいい気持ちと思う。思えているのがうれしいです。風が田の上を渡っていきます。さやさや緑の音がきこえます。お元気ですか」

 そんな言葉が表紙に書き込まれている。姫路市の版画家、岩川健三郎さんの絵日記ふうの月刊個人誌「ヘラヘラつうしん」。最新の21号には、五十葉の版画による「米」特集があった。

 「子どもの頃、『十二月八日、お父ちゃんは何していたん?」と聞いた。真珠湾攻撃の、太平洋戦舶を始めたその歴史的な日を、当時生きていた人は

覚えている…と思ったのやった。が、親父は『さあ…、忘れた…』と言うのやった。ぼくはがっかりした」

 昨年十二月十四日未明、日本は米の輸入を認めた。「あの日、あの時、ぼくは何を思ったのだろうか…というくらいは記憶しておきたい。自分たちが食べる米を他国にゆだねてしまった。農民と水田を見捨てた」と岩田さん。「田んぼで家族総出で米を作る。その"最後の目撃者"になった気がする」

 ヘラヘラいうけど、素朴な言葉が胸にコトンと落ちる。通勤途中、目をなごませてくれた田んぼは今春次々と消え、駐車場や宅地になった。緑の音は遠のき、聞こえにくくなった。

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