〇天上の声 (2006年05月30日)
「カセレリア!」
沖縄県で開かれた「太平洋・島サミット」の記事を読んでいると、やさしい響きに満ちたリャンテルさんの声が天上から聞こえてきた。ミクロネシア連邦のポンペイ島でのあいさつの言葉だ。
リャンテルさんは26年前、取材で世話になった島の老牧師。自宅から1時間も歩き、空港まで見送りにきてくれた。「もうあなたには生きて会えないから」と。
彼の自慢は1936(昭和11)年、島の代表として日本を視察したこと。東京の軍人会館に泊まり、京都、大阪を回ったその旅が島の外に出た唯一の体験で、日本から帰る船の中で作った「アロハオエ」の替え歌を歌ってくれた。
「大阪 お変わりない
京都 今日で最後
名古屋 お名残惜しいことで
横浜 よろしく頼む
太平洋 ごきげんよう
新宿 死ぬまで忘れません」
歌い終わると、リャンテルさんは麦ワラ帽子をぬぎ、私に差しだして「これしか渡すものがないんです」。あの帽子、どこにやってしまったのだろうか。