〇掲載年月日 2005年03月13日
西論風発:大阪市政改革 「外の力」を恐れるな=論説委員・池田知隆
ソニーの経営陣が電撃的に刷新され、創業以来初の外国人トップが誕生する。出井伸之会長兼CEO(最高経営責任者)は「私が決断した」と語っているが、会長自らが企業統治のため導入した社外取締役という「外の力」が刷新を主導した、との見方が広がっている。
社長と対等の立場で経営を論じる社外取締役は、経営者を合理的に監視するシステムとして米国の株主などに歓迎されている。ソニーもまた、日産自動車のカルロス・ゴーン社長のように「外の力」の活用で再生を図ろうとしているようだ。
これから存続できるかどうかという切実さが企業と自治体とではまるで違うが、その大胆な決断は「外部人材の登用」などで混乱している大阪市政改革との大きな落差を感じさせられる。
職員厚遇問題に端を発した大阪市の改革をめぐって市側は「大阪市都市経営諮問会議」(座長、本間正明・大阪大大学院教授)の事実上の解散を決めている。「市政改革を本格的に推進するためには、内部だけの体制では無理がある」と中央省庁からの人材登用を強く求める本間氏に対して「中央からの人材起用は、地方分権が進む中で矛盾する」と反発したためだ。
双方とも改革の必要性はわかっていても、その手法については「同床異夢」だった。
市は、職員厚遇の批判に応えて新年度予算案で166億円規模の経費削減を示した。だが、それは改革の第一歩にすぎない。「中之島一家」といわれる労使癒着の構造をどこまで改善できるのか、はた目には不安に映る。
一方、本間氏は、住民当たりの職員数が横浜市の2倍という大阪市の特異な行財政構造などにも深く迫ろうとしている。
メスをどこまで深く入れるべきなのか。その手術にふさわしい有能な人材がいれば、国とか地方という前に、世界に求めてもいいはずだ。
大阪には古来、新しいことに挑戦する進取の気風があった。地方自治の主役は納税者としての市民であり、その市民の目にたえる行政こそが求められている。市政改革をめぐるこの混乱を、より品格を備え、世界に開かれた都市として再生する契機としたい。