〇掲載年月日 2001年04月28日
西論風発:「顔の見える」教団活動を=池田知隆・編集委員
「解党的出直し」を訴えた小泉・自民党総裁による内閣が動き出したが、集団のは政治の世界だけとは限らない。
教団の役割をめぐって宗教界もまた岐路に立たされている。オウム真理教事件以後も怪しげな教団による事件が表面化し、社会に「宗教は怖い」「教団は金儲(もう)けしている」との不信感が広がっているからだ。
「宗教不信・宗教忌避の風潮に宗教はどう答えるのか?」「21世紀、日本人はどのような生き方をするのか?」「日本の宗教に21世紀の役割はあるのか?」――このようなテーマを掲げてシンポジウム「21世紀 日本の宗教を考える」が23日、大阪国際会議場(大阪市北区)で開かれた。
仏教系、神道系、その他68団体で構成される新日本宗教団体連合会(新宗連)が設立50周年を迎えるのを記念して開催した。これまで新宗連と政治的に鋭く対立していた創価学会のほか、信者との間でトラブルが起きた世界基督教統一神霊協会(統一教会)なども招き、「今や教団同士で対立する時代ではない」と斎藤謙次・新宗連事務局次長は語る。
21世紀は、モノから「こころ」の時代になるといわれながら、宗教界への不信感は根強い。
宗教意識の調査によると、「信仰心のある人」は戦後まもないころには約6割を占めていたが、現在は約3割と少数派だ。家庭から神棚・仏壇が消え、年老いた人たちにも「無宗派」層が増えている。
一方で、アニメ、オカルト、怪奇ブームなど若い人の宗教的関心は集団から個人的な「癒(いや)し」へと移っている。
しかし、地球的規模の「貧・病・争」への支援、環境、生命操作……の課題を見ると、他人とつながっていく「共生」感覚や集団による社会活動の可能性を軽視することはできない。
「今、NPO(非営利組織)が次々と生まれ、自らの信念を伝え、世直しに取り組んでいる。かつての教団もそうだったはずなのに、NPOのような共感が得られていない」
演劇、アートなど多彩な催しを展開し、「地域ネットワーク型寺院」を目指している浄土宗應典院(大阪市天王寺区)の秋田光彦・住職はシンポジウムの席上でそう問いかけた。
「地域の共同体が壊れ、檀家(だんか)がなくなったと嘆く前に、寺は新しい縁を結ぶところ。国内に約7万カ寺もあるが、それらは社会を変える力になりえているのか」
関西には、歴史と伝統が息づいた教団が多い。そして政治や経済をめぐって激しく渦巻く首都圏から距離をおくだけに、時代の潮流や波形がよく見えることがあるかもしれない。
経済再建や構造改革は緊急の課題だが、その後の社会をどう構想していくのか。
グローバル化する世界の中で、日本人の宗教とは何なのか。
宗教界も政界同様に「顔の見える活動」が求められており、広く深い視野から、現代人の心に響く「幸福のかたち」を提起してほしい。